主婦や学生の中にはアルバイト・パートを掛け持ちしている人も多いですよね。違う仕事・職場で働くことで自分には合わないと思っていた仕事が意外と楽しいと感じるなど、新しい発見につながることもあります。まったく違う仕事をすることでマンネリ防止という側面もあるかもしれません。
ただ実際には時間などの都合で同じ職場で働き続けられないので、自分にとって都合の良い時間帯に働くことができるバイト・パートを掛け持ちする、そういう方が大半だと思います。
ここで気になってくるのが社会保険(健康保険や年金)や税金、そして扶養家族から抜けなくても大丈夫なのかということ。せっかく今よりたくさん働いて少しでも家計の足しにと考えていたのに、たくさん引かれて手取りが増えなければ意味がありません。
そこでアルバイト・パートを掛け持ちしたときに気になる、社会保険や税金、そして扶養家族から外れるか留まれるかについて見ていきましょう。
社会保険料(健康保険・年金・雇用保険)
社会保険とまとめて呼んでいますが、健康保険・年金・介護保険・雇用保険・労災保険の5つに分けられます。介護保険は40歳以上になると健康保険といっしょに保険料が徴収されるものです。労災保険は雇い主側が保険料を全額負担しているものです。
このため一般的に社会保険料と言えば、健康保険・年金・雇用保険をさすことがほとんどですね。
まず社会保険の加入条件ですが適用拡大によって
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 月額賃金が88000円以上
- 学生ではない(定時制に通う学生は除く)
- 従業員規模が51人以上の事業所に勤めている
これらを満たすと社会保険に加入しなければいけません。月額賃金が88000円以上ということは、88000(円)×12(カ月)≒106万円。いわゆる106万円の壁の目安として月88000円として掲げています。
今月は仕事をよく頼まれたからお給料が90000円を超えちゃった、社会保険に入らなきゃいけないの?
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一定期間連続すれば加入対象になりますが、今月だけ多かった場合には原則的に加入対象には含まれません。(2カ月連続して多かった場合などには加入対象となるかも…)
2カ所以上の掛け持ちでアルバイト・パート
Aカフェで毎週15時間、B居酒屋は毎週12時間、合計で27時間働いているから社会保険の加入対象になるの??
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社会保険の加入条件の一つ、週の所定労働時間が20時間以上に該当するように見えてしまいますが、この決まりは勤務場所一カ所での話。2カ所以上の勤務場所での労働時間を足して条件を見ません。
同様に月額賃金を足すと10万円を超えるとしても、社会保険の加入条件には該当しません。
あくまで一つのお仕事で上記の条件に該当すれば社会保険の加入の条件に該当しますが、複数のお仕事での勤務時間や給料を足したものではありません。
一つのお仕事で社会保険加入の条件を満たすとき
上記に掲げた社会保険加入の条件を、複数のアルバイト・パートのうち一つだけが満たした場合にはその勤務先で社会保険に加入します。条件を満たしてはいない勤務先では特に手続等もありません。
複数のお仕事が社会保険加入の条件を満たすとき
近年は働く人を確保するために時給もかなり高くなっていますし、それ以上に物価も高くなっていますから、少し働く時間を長くして家計を助けなきゃとお考えの方も多いです。
すると掛け持ちで働いているアルバイト・パート先の複数で社会保険の加入条件をクリアしてしまうこともあり得ます。
この場合はそれぞれのお勤め先で社会保険料を支払うことになります。
ただお勤め先それぞれで保険料を計算するとかなりの高額になることが予想されますが、この場合は収入を合算して保険料が決定されます。Aカフェで9万円、B居酒屋で10万円の収入を得ている場合は、合計の19万円に対する社会保険料が計算され、収入の割合によってAカフェとB居酒屋で天引きされる額が決定します。
この場合AカフェとB居酒屋双方で社会保険加入手続きを行ったうえで、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年機構(年金事務所)に提出する必要があります。
アルバイト・パートの掛け持ちの方で該当する方は少数かもしれませんが、お勤め先の健康保険が健康保険組合の場合には「年金事務所発行の二以上勤務被保険者決定通知書(写)」をお勤め先を通じて健康保険組合への提出が必要になるなど、手続きが面倒になります。
※健康保険や厚生年金の保険料は収入に応じて各お勤め先で天引き額決定されます。また健康保険証は主たるお勤め先から発行されます(収入が多いお勤め先)。なお雇用保険は主たるお勤め先で加入し保険料が天引きされます。
学生の社会保険の加入条件
社会保険の加入条件は適用拡大によって、学生以外は範囲が広げられました。ただし学生に関しては適用拡大はされておらず従来の条件が適用されています。
週あたりの労働時間が正社員の3/4以上ある人
正社員は8時間勤務で週に5日働く場合、週あたりの勤務時間は40時間です。この40時間の3/4以上にあたる30時間を超える場合は学生であっても社会保険へ加入しなければなりません。
学生の場合は月に88000円以上の収入といった社会保険への加入条件もありません。
※定時制に通う大学生や高校生、休学中の人、卒業見込証明書があり卒業後も引き続きその勤務先で働く場合を除きます。
税金
税金はすべての給料(所得など)を合算して計算されて課税されますが、アルバイトであっても88000円以上(社会保険料控除後)のお給料があれば源泉徴収されることになっています。
源泉徴収票
アルバイト・パートであっても、そして税金をまったく源泉徴収されていなくても源泉徴収票は必ず発行されます。(雇い主側の義務)
基本的には年末調整が終わった後に発行されますし、年末までにアルバイト・パートを辞めた場合には、退職後一カ月以内に発行されます。
アルバイト・パートを掛け持ちで行っている場合には、それぞれの勤務先が源泉徴収票を発行します。
年末調整
年末調整は勤務先での1年間の収入と支払った保険料などを計算し、これまでに源泉徴収された税金の過不足を計算するものです。
勤務先が一カ所ならば年末調整で税金の計算は基本的には終わるのですが、アルバイト・パートを掛け持ちで行っている方の場合は少し事情が異なってきます。
年末調整は主たる勤務先でのみ行い、他の勤務先では行いません。
他の勤務先の収入を含めて税金(所得税・住民税)を計算しますから、掛け持ちで働いている方は原則確定申告が必要になります。
※他の勤務先でも年末調整をした場合は、その年に発行されたすべての源泉徴収票を使って確定申告します。
確定申告
毎年2月16日ごろから3月15日ごろまで、税務署や申告会場で確定申告を行っています。
(e-Taxが便利です、筆者もe-Taxを利用しています)
アルバイト・パートを掛け持ちで行っている人は、原則確定申告をしなければいけません。
今はアルバイト・パートであってもお勤め先にマイナンバーを届けることになっていますから、税務署はあなたの給与収入についてすべて知り尽くしていますから、関係ないと言って確定申告をしないでいると後々面倒なことになりますよ。
ただしお勤め先のうち一カ所で年末調整をした場合には、
- 年末調整をしなかったお勤め先の収入が20万円以下
- アルバイト・パート収入の合計が(基礎控除などを除く所得控除(社会保険料など)を差し引いた額)が150万円以下
該当する場合は確定申告の必要はありません。
ただし、住民税の申告が必要になるケースがあります。詳しくは各市区町村のHP等をご参照ください。
扶養控除
配偶者の扶養控除の範囲内で働きたい方も多いですよね。扶養控除に該当すれば配偶者の給与の控除額が増え、配偶者の勤務先の健康保険に加入できますし、さらに第3号被保険者として別途国民年金に加入しなくてすむなど、経済的にはかなり大きいですからね。
- 100万円を超えると
住民税が課税される(配偶者には影響はない) - 103万円を超えると
配偶者は扶養控除が受けられなくなり、手取りが減ります。 - 106万円を超えると
お勤め先で社会保険加入が必要になることがある(配偶者の社会保険から抜ける) - 130万円を超えると
お勤め先等で社会保険に加入し、配偶者の社会保険から抜ける。 - 150万円を超えると
配偶者特別控除が受けられなくなる。
こうして見ていくと103万円はどうしても意識してしまいますし、社会保険に個人で加入が必要になる106万円や130万円も大きな壁になります。
世帯全体の収入を考えた上で(控除の有無や社会保険の加入)アルバイトやパートの掛け持ちも考えていきたいところです。
また学生も103万円を超えると保護者の扶養控除から外れて保護者の手取りが減少しますので、保護者と事前に話し合うなどして、バイトの時間を調整しておきましょう。