事故や故障によって運転できなくなったとき、他社に依頼して輸送を代行してもらう振替輸送ですが、振替輸送に応じてもらえる乗車券類と断られる乗車券類もありますし、そもそも他社からの振替輸送を受託しない社局も中にはあります。
振替輸送のルールなどを少しおさらいしていきましょう。
振替輸送の対象か非対象か?
まずはお手持ちの乗車券類が振替輸送に該当するのか、それとも該当せず他社路線に乗車するためには別途運賃の支払いが必要になるのかを見ていきましょう。
改札入場前 | 改札入場後 | |
普通乗車券 | ✖ | 〇 |
定期乗車券 | 〇 | 〇 |
交通系ICカード(定期乗車券の区間内は除く) | ✖ | ✖ |
団体乗車券 | 〇 | 〇 |
クレジットカードによるタッチ決済 | ✖ | ✖ |
企画乗車券 | ✖ | 〇(✖) |
券売機や窓口で購入するいわゆるふつうの〝きっぷ〟が普通乗車券で、購入したもののまだ改札を通っていない時点では、振替輸送の対象にはなりません。
改札を通過した時に鉄道会社との輸送契約が成立して、目的地までの輸送を鉄道会社が請け負うことになり、その履行のために振替輸送を行うわけです。
改札を通る前に運転が中止した場合には、購入した普通乗車券の払い戻しを受け、他の鉄道やバスなどの交通機関に料金を支払って目的地に向かうことになります。
定期乗車券(SuicaやICOCAなど交通系ICカードに載せた定期券の有効区間を含む)は有効期間内はその区間を自由に乗り降りできるものですから、改札に入る前であっても振替輸送の対象になります。
団体乗車券は発行の時点で日にち・区間・人数・割引率を確定して発行した乗車券ですから、改札に入る前であっても振替輸送の対象になります。
定期券を載せていない、載せていても定期券の有効区間以外の交通系ICカードについては、改札を通った時点ではどこまでの乗車なのかを鉄道社局側とは何も契約していない状態です。もちろん利用者側は○○駅まで乗車するつもりだと思ってはいるでしょうが、鉄道社局側はまだ利用料金を収受もしていませんので振替乗車の対象外としています。
同じ理由でクレジットカードのタッチ決済による乗車も振替輸送の対象外としています。
企画乗車券(お得なきっぷなど)ですが、基本的には改札に入って以降は振替輸送の対象になります。ただし一部の企画乗車券で明確に振替輸送の対象とならないと明示されたものをはじめ、一部の企画乗車券は振替輸送の対象外になる場合があります。
※JR東海のように「フリー型の割引きっぷ(一部を除く)は、現在と同様対象外です」と公表している会社も……。
株主優待乗車証、特殊乗車証、社員乗車証(職パス)等は振替輸送を利用できません。(株主優待券で購入した普通乗車券は振替輸送の対象です)
振替乗車票の発行を行わないケースが増えた
以前は振替乗車によって他社線を利用する場合、振替乗車票を受け取って他社線の下車駅で手渡していましたが、都市部では乗車票を受け取るにも混乱を来す人の多さでした。そこで多くの社局では振替乗車票なしで乗車できるケースが増えています。
他社線を振替輸送で利用する時は、自動改札に乗車券類を入れたりタッチせず、係員に提示して入場してください。
また降りる駅でも係員に提示して駅から出てください。(普通乗車券は降りる際に係員へ手渡しますが、まだ有効区間がある普通乗車券は提示するだけ)
なお振替輸送がバスの場合は鉄道とは違い振替乗車票が必要なことが多いので忘れずに受け取りましょう。受け取らなければ実費になります。
振替乗車票は改札から出てすぐなど駅構内で配られることが多いです。
振替輸送を行っていない?
振替輸送を行うには、社局同士で振替輸送の契約をあらかじめ行っている必要があります。
どの区間で運転ができなくなった場合は、振替輸送を受託する社局は○○駅から○○駅の間で請け負う、といった具合にあらかじめ契約を行います。
また振替輸送時には委託する会社はどことどこの駅へ係員を派遣するのかなど、かなり細かい打ち合わせを事前に行っていますし、それこそ振替輸送を受託した場合の費用清算についても取り決めを行う必要があり、急に今から振替輸送をお願いしようとは現実問題として無理なんです。
「並行して走る道路にバスが走っているじゃないか!なぜ振替輸送をしないんだ!」
「ほぼ同じ区間に別の鉄道が走っているのに、なぜ振替輸送を行わないんだ!」
時折こういった声も出てきますが、事前に取り決めを行っていないことが多いです。
また取り決めをしていても、時によっては振替輸送を受託しないこともあります。
ほぼ並行してい走っているJR西日本と山陽電鉄の神戸から姫路の区間ですが、JR西日本は新快速や快速を最大12両、各駅停車を7両で運転していますが山陽電鉄は直通特急で6両、普通は3~4両で走っており、ラッシュの時間帯にJR西日本からの振替輸送を受託すると山陽電鉄側がパンクしてしまいます。
以前夕ラッシュ時間帯に振替輸送を受託した山陽電鉄は身動きがほぼできないほどの超満員になり、緩いカーブに差し掛かった際に一人の旅客が少しよろめいたせいで周りの人みんながよろめき、手を突こうと伸ばした先の窓ガラスが粉々に割れた、なんて様子を目の当たりにしたことがあり、受け入れられる人数を超えてまで振替輸送を受託するのはかなり危険です。
このために時間帯によっては振替輸送を受けられない、こういったケースもあります。
平行する新幹線への振替輸送
在来線が事故などで運行ができなくなったとき、平行して走る新幹線への振替輸送が実施されることがあります。
普通乗車券や定期券だけで新幹線への乗車を認めるものですが、1時間とか2時間程度の運転休止ではまず行われることはありません。
半日とか丸一日以上運転再開の見込みがなく、地域の通勤通学に支障をきたす場合などよほどの大きな事故の場合ですね。
普通列車専用の企画乗車券(青春18きっぷなど)で振替輸送で新幹線への乗車が認められたということもありますが、あれは特例中の特例で、原則的に新幹線への振替乗車は認めていません。あくまで普通列車専用の企画乗車券ですから仕方がありません。
振替輸送のその他の注意点
事故などで大混乱となり、振替輸送の受託要請が遅れることがあります。振替輸送を受託していない社局は当然ですが、他社の普通乗車券や定期券では改札から入れてはくれません。
ですがたまに振替輸送になると見越して、他社の駅へ来て乗せろ乗せられないと揉めてしまうことがあるようです。
振替輸送で指定されていない路線や区間に乗車したときは自費となります。
バスがなかなか来ないと言ってタクシーを利用して、後日領収証を持って清算するように迫る人もいますが、当然認められません。
A駅からB駅までの乗車券で乗車中に運転休止となって、途中のC駅で降りて振替輸送で他社線に乗車。振替対象区間はc駅からb駅までですが、途中のz駅で降りる場合……。
多くの社局では振替輸送中の途中下車は認めておらず、振替輸送で乗車したc駅からz駅までの普通運賃を請求されます。(認めている社局もあります)
A駅からB駅までのic定期券を持っていて不通区間が発生、C駅で下車する際に自動改札をタッチせずに下車し、振替輸送となる他社線ではタッチしないように案内されc駅でもb駅でもタッチしなかった。
この場合次回乗車する際に自動改札でタッチするとエラーとなります(降車時のタッチがないため)
特に混雑している駅では自動改札をフリーの状態に開放することがあり、本来はC駅で降車時にタッチする必要があったのですが……。
- 乗車時に駅員に処理をしてもらってから乗車する
- 乗車時に駅員がいないときはインターホンで事情を説明してから乗車し下車駅で処理してもらう
このケースはかなり多いようですから、乗車時に自動改札をタッチしてゲートが閉まっても慌てないように……。